スポーツ栄養学
野球
競技特性
・守備と攻撃を繰り返す
・瞬発力が必要
・試合・練習時間が長い
野球は守備と攻撃を繰り返す、間欠性競技です。攻撃に比べ、身体の動きが少ない守備のときも、高い集中力が求められます。試合の時間制限がない競技なので、長時間にわたりプレーが出来る強靭なフィジカル・メンタルが要求されます。
野球選手が目指す身体
・下半身の発達
・強靭なフィジカル
野球は投球やバッティングなど、上半身の動きの方が多いように思われがちですが、下半身の筋肉が発達していることにはメリットが多く存在します。野球は瞬発力をどれだけボールに伝えられるかでピッチングやバッティングが影響されます。例えば、投手の場合投げる動作の際股関節を屈折させ、捻転させる動作の中で、下半身にしっかりと必要な筋肉がついていれば、土台が安定することによってブレが少なくなり、よって、コントロールが定まりやすくなると言われています。
ボールを投げたり打ったりするのは上半身ですが、これらの動作は下半身が主導の動きなので、上手い選手ほど上半身の脱力がうまく下半身が発達していると言われるのはこのためです。また、過度に上半身が発達して下半身が弱いといわゆる手投げだけになってうまく力が伝えられなくなる恐れがあるので、バランスが大切です。
求められる能力
・力をバットやボールに爆発的なパワーを伝える「瞬発力」
・翌日の試合に疲れを残さない「リカバリー力」
・長い試合も最後まで戦い抜く「スタミナ」
・時間制限のない試合でも切れることのない「集中力」
・けがを防ぐ「柔軟性」
これらの能力を野球選手は備えておく必要があります。多くの能力や体の機能性の高さが求められる競技であることがわかると思います。それらは日ごろの練習で備えるだけでなく、ストレッチや食事などの日々のケアが重要です。その中でも、食事は選手の身体をつくる上で重要な要素です。
野球選手の身体をつくる食事
・アスリートに欠かせない5大栄養素を食事で補う
・単に体重を増やすのではなく、筋肉量を増やす食事
・対外試合のない時期の過ごし方が身体づくりのカギを握る
・野球に必要な瞬発力や判断力も食事から
監督やマネージャーから、とにかく沢山食べるように指導されている選手も多く、身体を大きくすることが求められる競技です。しかしながら、練習時間が長く、夏季には練習試合や遠征、炎天下の中での練習等、体重が増えにくい特性があります。そのため、対外試合が禁止されている、11月から3月頃までの過ごし方が、身体の成長に大きく影響するとも言われています。体重の増量が必要な選手は試合のない時期にウエイトアップを指導されるようです。
また、年間を通して厳しい練習や筋力トレーニングを行っており、その分エネルギーの消耗が激しく、練習のない完全にオフの日が少ない特性から、いかに翌日の練習に疲れを持ち越さないかも大切にしたい要素です。
野球選手に必要な栄養素
アスリート共通の食事のコツです。様々な食材から摂るようにしましょう。
瞬発力・判断力を高めるためには
バットをスイングさせる、ボールを投げる動作、ダッシュする動きには瞬発力が求められます。このように、一瞬で爆発的にエネルギーを使うには、神経が正しく働き、身体を動かす筋肉へ伝達させる「情報伝達」を身体が行っています。そのためも神経が正しく動く必要があります。情報が筋肉へ正しく伝わらないと筋肉が痙攣をおこすなど、ケガに繋がりかねないので、しっかりと食事やサプリメントで栄養を補いましょう。また、野球は瞬時に状況を判断し、プレーをすることが求められます。
・カルシウム・マグネシウム
カルシウムには神経の伝達物質の働きを調節する働き、マグネシウムには情報伝達物質の量をコントロールする働きがあると言われています。いずれも神経の働きには欠かせない栄養素です。
カルシウムが多く含まれる食材・・牛乳、ヨーグルト、ひじき、魚、小松菜、青梗菜など
マグネシウムが多く含まれる食材・・アーモンド、大豆、干しエビ
・糖質
身体だけでなく、脳のエネルギー源となる栄養素です。試合時間の制限のない野球は、試合によっては長時間にわたり、正しい判断力・集中力を保つ必要があります。ご飯やパンなどの炭水化物は体内で働きやすい糖に分解され、血液の中に溶けだします。脳の働きを良い状態に維持するためには、血液中に糖が維持されている状態にしておく必要があります。
そのために、様々な種類の果物やごはん、パンなどの炭水化物を摂取することで、身体の中に吸収されるスピードをゆっくりにし、血液の糖の量を維持することが期待されます。スポーツドリンクなどを活用することで、ベンチでも糖質を補うことが出来るので、上手に活用しましょう。
食材・・おにぎり、脂質の少ないパン、餅、マルトデキストリンなど
効率良く疲労回復するには
・ビタミンB1
糖質をエネルギーに変えるときに必要になる栄養素です。水に溶けるビタミンで、 消費エネルギーの多い野球選手にとってはリカバリーにも関わる重要な栄養素の一つです。不足すると食欲不振や倦怠感、疲労が抜けにくくなるので積極的に摂るように心がけましょう。
食材・・豚肉、うなぎ、アーモンド、焼きのり、など
・クエン酸
エネルギー代謝の中心になる役割があります。柑橘系の果物や食酢に含まれています。食酢の酸味が食欲の増進に繋がり、食の細くなる夏の時期には酢の物や南蛮漬けなど、酢を料理に使うことで夏バテ防止も期待できます。
食材・・レモン、グレープフルーツなどの柑橘系、食酢
・ビタミンC
皮膚やコラーゲンの合成に関与し、ケガの治りにも関わるビタミンです。また、抗ストレスにも必要な栄養素なので、プレッシャーに打ち勝つ強いメンタルが求められる野球選手には積極的に摂ってもらいたい栄養素です。
食材・・柑橘類、じゃがいも、ブロッコリー、ゴーヤー、いちご、キウイフルーツ
・BCAA
必須アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシンの総称です。トレーニングで傷ついた筋肉の修復や、疲労物質の発生を抑えて疲労回復にも効果的です。また、運動中にもエネルギー源として活用されるので、スポーツドリンクのように摂るなどして、補給を心がけましょう。
まとめ
・長時間の試合に打ち勝つ強靭なフィジカルが求められる
・投球やバッティング、ダッシュなど、瞬発力が必要
・翌日に疲れを残さないリカバリー力を補う
・筋肉を増やして身体を大きくする食事
夏は炎天下、冬は厳しい寒さの中で練習する野球選手はいかにコンディションを整えることが出来るかが重要です。そのためにも、普段の食事から必要な栄養を補い、正しい食生活を習慣化することを心がけましょう。
学生の野球部の場合、所属部員数の場合レギュラーが15名ほどとベンチ争奪も激戦です。しっかりと食事や休息をしっかりと摂り、回復力や自己管理能力を身に着けることは、厳しい練習にもアグレッシブに取り組むことが出来、プレーの上達に繋がるはずです。ビーレジェンドと共に、強靭なフィジカルを持った野球選手を目指しましょう。