スポーツ栄養学
アメリカンフットボール
競技特性
・格闘技と球技の両方の要素を持つ
・攻守はポジションごとに役割があり、それぞれの体格や特性を活かすことが出来る
アメリカンフットボールはボディコンタクトが多い激しいスポーツです。ラグビーとよく比較されますが、攻守で様々なポジションに分かれていること、プロテクターを装着してプレーを行うことが大きな違いとして挙げられます。
また、選手だけでなく、スタッフを含めるとフィールド上で試合に携わる人数は100名にも及ぶと言われています。ハーフタイムにはチアリーダーによる演技があるなど、観客との一体感もこの競技の魅力です。
アメリカンフットボール選手が目指す身体
・ボディコンタクトに負けないだけでなく、動き回ることのできる身体
アメリカンフットボールは沢山のポジションがあり、それぞれの特性を活かすことの出来る競技です。例えば、身体の大きな選手が相手ディフェンスに負けない突破力を要するタイトエンド、スピードに自信がある選手は細身であってもワイドレシーバーとして活躍が出来るなど、必ずしも身体を大きくすることが必要ということではないようです。
しかし、求められる体格はポジションの特性によって若干の違いはあるものの、プロテクターの総重量は約5kg前後で、身体に装着して動き回ることができる筋量が十分にあることはどのポジションでも大切な要素です。
求められる能力
・プロテクターを付けて動くことのできる「タフな持久力」
・駆け引きに強い「メンタル」
・ケガや疲労に負けない「リカバリー力」
こちらもポジションによって異なるものの、重いプロテクターを装着しても動き回ることの出来るパワーや持久力は共通して言えることです。
また、アメリカンフットボールは、戦術の駆け引きが勝利を左右させる競技ともいわれており、心理戦のような駆け引きをする場面も見られます。相手にプレッシャーをかけるためにフォーメンションを変えたるなど、緻密な戦術を遂行するためにも、勝負強さや集中力の持続は必須です。
激しいプレーでのダメージから身体を回復させるためのリカバリー力はケガを防止するためにも重要です。
アメリカンフットボール選手の身体を作る食事
・当たり負けしない強い身体を作る
・集中力を持続させるために糖質を補給する
・瞬発力・俊敏性に働きかける食事
・疲労やケガの回復を早め、持久力を養う
・水分補給をしっかりと
それぞれのポジションの選手が担う役割を果たし、戦術を遂行するためにも、個々の持つ能力を十分に発揮できなければなりません。集中力やスタミナを欠かすことのないように、栄養補給のタイミングにも気を配りましょう。
ボディコンタクトの多い競技なので、疲労の溜まった状態は負傷の原因にもなりかねないので、日々の疲れを試合に持ち込まない、疲労回復のできる食事を摂ることも心がけたいポイントです。
屋外で行うスポーツなので、水分補給をこまめに行うなど、熱中症・脱水症の対策をとりましょう。
アメリカンフットボール選手に必要な栄養素
アスリート共通の食事のコツです。様々な食材から摂るようにしましょう。
瞬発力・俊敏性を養う
・カルシウム・マグネシウム
カルシウムには神経の伝達物質の働きを調節する働き、マグネシウムには情報伝達物質の量をコントロールする働きがあると言われています。いずれも神経の働きには欠かせない栄養素です。
カルシウムが多く含まれる食材・・牛乳、ヨーグルト、ひじき、魚、小松菜、青梗菜など
マグネシウムが多く含まれる食材・・アーモンド、大豆、干しエビ
・たんぱく質
瞬発力を高めるためには強い筋力が必要です。筋肉を構成するたんぱく質を十分に摂りましょう。
当たり負けしない強い身体を作るには
丈夫な筋肉をつけること、骨を強くして身体の基礎をしっかりと作ることが大切です。
また、増量を行う際は、体脂肪ではなく、筋肉を増やす増量を心がけるようにしましょう。
・たんぱく質
筋肉だけでなく、骨や内臓、血液などの材料となるたんぱく質は一度の試合でエネルギー消耗も激しく、アスリートは一般の人に比べ、多く摂る必要があります。食事だけでは必要量を摂ることが難しい場合はプロテインやサプリメントも上手く活用して不足しないようにしましょう。
また、ケガを防ぐためには、危険な部位を重点的に鍛えておくことも重要です。特に大きなケガ繋がるリスクが高いので、首は鍛える必要があるほか、体幹や股関節といった関節のまわりの筋肉を鍛えることで相手との激しいコンタクトにも耐えられるようになることが期待できます。
・ビタミンB6
たんぱく質を代謝させるのに必要な栄養素です。
食材・・鶏ささみ、マグロ、ピーマン、にんにく、バナナ
・カルシウム
骨折を防ぐためには、骨の材料となるカルシウムも摂っておきたい栄養素です。牛乳やヨーグルト、チーズはカルシウムが吸収されやすい食品なので積極的に摂りましょう。骨ごと食べられる、缶詰や小魚もおすすめの食材です。
食材・・乳製品、魚類、小松菜、海藻類
・ビタミンD
カルシウムと一緒に摂ることで、カルシウムの吸収効率を良くする働きがあると言われています。
食材・・きのこ類、鮭、うなぎ
疲労を回復し、持久力を養うには
走り込みや、基礎練習など、普段の練習量も多いアメリカンフットボール選手は疲労回復にも気を付けなければなりません。常にベストな状態で臨むためにも、日頃から練習の疲労を翌日に持ち越さないように、しっかりと食事・休養を摂り、疲れに負けない身体を目指しましょう。
・糖質
試合の日など、固形のものを口に入れることが難しい場合は糖質の入ったスポーツドリンクで、水分と一緒に糖質を補いましょう。
・ビタミンB1
糖質をエネルギーに変えるときに必要になるビタミンです。リカバリーにも関わる重要な栄養素の一つです。不足すると食欲不振や倦怠感、疲労が抜けにくくなるので積極的に摂るように心がけましょう。
食材・・豚肉、うなぎ、アーモンド、焼きのり、タラコ、など
・クエン酸
エネルギー代謝の中心になる役割があります。柑橘系の果物や食酢に含まれています。食酢の酸味が食欲の増進に繋がり、食の細くなる夏の時期には酢の物や南蛮漬けなど、酢を料理に使うことで夏バテ防止も期待できます。
・ビタミンC
皮膚やコラーゲンの合成に関与し、ケガの治りにも関わるビタミンです。また、抗ストレスにも必要な栄養素なので、相手選手との駆け引きなど、プレッシャーのかかるシーンがあるアメリカンフットボール選手には是非積極的に摂ってもらいたい栄養素です。
食材・・柑橘類、じゃがいも、ブロッコリー、ゴーヤー、いちご、キウイフルーツ
ボディコンタクトの多いアメリカンフットボール選手は特に貧血の対策が必要
鉄分は酸素を全身の細胞に届ける組織の原料で、不足すると低酸素状態となり、身体機能を低下させると言われています。激しい運動で汗をかくと、鉄分も汗と一緒に排出してしまいます。また、足部が地面と衝突することでも鉄分が失われます。これは、足の裏には血管が集合しており、衝撃を受けると赤血球が壊れやすくなるためです。その他にも、アメリカンフットボール選手の場合は相手のタックルなど、ボディコンタクトを受けた際、毛細血管が押しつぶされて赤血球が破壊されることから、貧血には特に気を付けなければなりません。
・鉄分
レバーや食肉、牛乳などに含まれている鉄分はヘム鉄と呼ばれ、吸収の良い鉄分として分類されます。また、ほうれん草や小松菜、ひじきなどに含まれる植物性の食材に含まれる鉄分は「非ヘム鉄」で、ヘム鉄に比べると吸収力は下が下がります。そのため、効率よく鉄分を補給するためには、鉄分と相性の良い食材を一緒に摂ることが重要です。ビタミンCやたんぱく質と摂るようにすると、吸収されやすくなります。
ヘム鉄・・レバー、牛もも肉、しじみ、あさり、かつお、まぐろ、鮭、牛乳など
非ヘム鉄・・ほうれん草、小松菜、納豆、小松菜、昆布、切り干し大根など
こまめに水分補給をし、脱水を防ぐ
おおよそ体重の2%の水分を失うと、試合中のパフォーマンスが低下すると言われています。汗をかくことによって体温を調節し、血液の循環を円滑に行っているため、身体の水分が足りなくなると、これらの動きに影響が出ます。また、汗によりやミネラルも流れるので、足のつりにも注意しておきたいところです。炎天下で競技が行われる場合は特に気を付けるようにし、水分補給の際にはスポーツドリンクも活用し、水分と一緒に失われたミネラル(カリウム・カルシウム・ナトリウム)を補給しましょう。練習中はこまめに水分を補うなど、こまめに補給しましょう。
カリウム・カルシウム・ナトリウム
筋肉の収縮時にも必要なミネラルです。
まとめ
・ポジションを問わず、動ける強い身体作りが大切
・戦術を遂行する集中力を切らさない
・水分と一緒に糖質とミネラルを摂り、脱水症状や脚のつりを防ぐ
アメリカンフットボールは格闘技・球技の要素があり、違った能力を持つ選手が頭脳プレーを繰り広げる奥深い競技です。それぞれの身体能力の強みを活かすためにも、すべての選手がベストのコンディションであることが大切です。アメリカンフットボールに必要なスタミナ、筋力、複雑な戦術を遂行するための強い集中力も毎日の栄養補給の積み重ねで培われます。ビーレジェンドはフィールドで活躍するアメリカンフットボール選手の身体作りを選手の一番近くで応援しています。