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【ひげセンセの健康を学ぶ】第10回 「ダブルスタンダードを無くせ」

快適な空間

筋トレブームである。多くの若者が男女を問わずジムのドアから入って心地良い顔をして出てくる時代になった。男だから筋肉が付きやすい、女だからちょっとという問題は過去の迷信になった。

的確なトレーニングを継続して行えば確実に身体が変わる、ということをみんな知っている。身体を”思い通りに”変えられる、成長期を過ぎても、これを実感できることがまた多くの集客になる。

それは市場が大きくなるということになり、当然提供する側の意識も変える。昔は、冷房など無縁な狭くカビ臭いジムが当たり前だったのが、高い天井、バリエーションに富んだマシン群、空調は標準装備だ、もちろんローカーやシャワールーム、プロテインバー、アパレルグッズコーナーも備わっている隔世の感がある。

バックグランドの是非

トレーニングで確実に身体は変わると言ったが、その変わるスピードにも”確実に”個人差がある。バックグラウンドの違いもある。格闘系の競技をしてきた人と、なんの運動もしてきていない人が、ヨーいどんでジムトレを始めれば、挙上レベルの違いは明らかだ。

でもその二人が一年継続できた”として”、とある舞台にパンツ一枚で上がった時、格闘系経験者が優勢になるとは限らないのもまた事実である。胸や腕、脚の”太さ”は貧弱だが、格闘系で付いて”しまった腹部周りの筋群の太さは距離を置いて観察すると寸胴に見える。

なんの癖もない運動初心者は、腹部周りの筋群は貧弱でもしっかり腹直筋に深みさえあれば、そして肩甲骨周囲の筋群の左右へのコントロールなど可能ならば、綺麗な逆三角形の上半身を見せることができる。格闘系の太い脚も時にただの太い棒なのに、運動オンチ系の脚に流線型のカーブさえあればあっという間に上に駆け上がることができたりする。

遺伝の是非

今や多くの外国人がインバウンドで日本を訪れる。同じ白人でも見上げるような青い目をしているかと思えば、日本人並のサイズの場合もある。概して北欧系は巨大、地中海系はコケティッシュである。

これはローマを中心に文化が花開く紀元前から書き残されてきたことで、巨大で戦闘能力に長けたアルプス以北のガリア、ゲルマン(今のフランス、ベルギー、オランダ、ドイツ)の侵入に、小柄なローマ人たちがどう工夫して対応してきたかからも分かる。

この体格の差は遺伝子による命令の結果生まれることもわかってきた。身長は確実に永遠には伸びない、ある時、必ず止まる、そして最初は女で作られた人間は途中から男に変わる、ことも遺伝子による。

弄る

この体格差、筋肉のつきやすさ、つきにくさ、環境によっての差、色々な要素をなんとかしてみたいと考え調べ試してみるのも文化を作り上げてきた人の知恵である。

まずは、赤ちゃんからなぜちゃんと大きくなれないのか、という病に対する治療から発見されたのが成長ホルモンである。そして女を男にする過程で見つけられた男性ホルモン。戦争による飢餓や平和による飽食の時代でも陥る糖尿病の原因治療精査で見つかったインスリン。これらは全て、身体を大きく作る力のある物質で、外から補充することもできる。

病に使えるなら、健康な身体ならもっと巨大な健康体、すなわち筋肉の”化け物”を作れるのではとなるのが人間の性(さが)である。最初は人のためになる良き事が、次第に悪きことになるのもサガなのかもしれない。

堂々と調べる

オリンピック競技がなぜ多くの人の感動を呼ぶかといえば、薬剤投与で作られた身体ではなく、薬剤でレベルを上げたパーフォーマンスではなく、そのチェックも公平になされているからでもある。

人は”ズル”をしてしまうものだ、という”サガ”を第三者が冷徹にチェックして公に晒す。筋トレブームで舞台で競い合う選手たちのその見事な身体が、ドーピングで作られたものである、とは”一般の人”は誰も思わないだろう。

でも、疑うのはお金もかかる、その検査費用に多大な費用がかかるのも事実である。だから時に大会主催者は、謳うだけにする、アンチドーピングと。そして、”ユーザー”たちも、誰も自分からカミングアウトなどしない。ただ、”あちら側”で生きる決意とその潔よさを認めてくれ、などと言うだけである。

これは大変なことで、自ら多くの薬剤を筋肉肥大のためだけに与え続けること、それを良しと見てくれと言うことである。薬剤というのは、まだたかだか数十年の歴史しかない。多くの薬剤は念入りな動物実験を経て市販されて初めて驚くべき副作用が見つかり市場から姿を消すことは、”当たり前”である。

いかに健康で長く好きなことをして人生を終えることが多くの人の望みであるはずが、”あちら側”に行くことがいかにも勇敢なスターに準えることは、おかしい、ダブルスタンダードなのである。

成功しているのは、単なるビギナーズラックと思うべきであり、このブームにあやかっている企業は、積極的にその検査費用を持ってでも、”クリーン”なスタンダードを確立すべき時代と思う。そうしなければ、増え続けたジムはただのゲテモノ小屋作成場に終わる。

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昭和32年生まれ 経歴:昭和57年宮崎大学(旧宮崎医科大学)医学部卒業  専門分野 脳脊椎脊髄外科 昭和57年からボデイビルを始める。ミスター東九州、ミスター広島(いずれもNBBF)優勝、NGAマスターズ優勝(USA)のタイトル。41歳で競技引退。 平成25年まで某ボデイビル月刊誌にて連載。筋トレセミナーを各地にて開催。その他、三輪書店、メディカルビュー社から外科手術用教科書執筆(共著) 趣味:ボデイビルトレーニング、筋トレマシン収集、読書、ピアノ 「ひげセンセのブログ」https://ameblo.jp/asaminaosan/

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