ビーレジェンド商品に同梱される【リアスタ通信】に連載されており、初心者から上級者まで大人気の「ひげセンセの筋肉教養講座」のバックナンバーを掲載!外科医でありながらコンテスト優勝経験もある浅見先生の記事は勉強になること間違いなし!
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たんぱく質へのこだわり
筋トレ愛好者は「プロテイン」「高たんぱく」この2つの言葉にこだわる。
少しでもたんぱく質含有率の多いサプリや食品に眼がいく。
一流アスリートも、「自称」トレーナーさえも、プロテインは多めに取るべきですと断言する。
では、なぜプロテインが大切なのだろうか?
なぜ糖質や脂肪では「いけない」のだろうか?
僕たちの身体の構成成分はほとんどがたんぱく質と水。細胞一個一個のレベルで、その細胞が集まって組織や器官を創っているのだが、それらの構成成分もほとんどたんぱく質と水分から出来ている。はたまた、それらを維持するためたくさんのメッセンジャー(多くのホルモンやサイトカインなど)もたんぱく質。そして外部の侵入者や自らのトラブル補修のための免疫システムもたんぱく質から創られる。
たんぱく質は水の中を動き運ばれて、創られ使われ壊されまた水に溶けて捨てられて行く。身体を創る設計図である遺伝子も、そこに「記載」されている「内容」はほとんどたんぱく質についてだ。
トレーニングとたんぱく質
卵子と精子が出会い一つの細胞になってから、一ヶ月もすると筋肉や骨、そして種々の内臓はできあがってくる。遺伝子の命令に従ってたくさんのたんぱく質が創られ、そのたんぱく質がまた別のたんぱく質を「修飾」して複雑な形を創って行く。骨格筋の場合、たくさんの細胞が「合体」して動きに特化したたんぱく質を作り出していく。中には細かい神経や血管が、やはりたんぱく質の「導き」で入り込んで行く。血管も神経もその「路」はたんぱく質でできている。筋肉は骨の近くでは腱となり骨を包む膜(骨膜)に続く。骨、腱、それらを包む膜も、カシミアセーターのように幾重にもコラーゲン繊維が紡がれたもの。これもタたんぱく質の上等な製品である。
上等な織り物も使っていれば摩耗して古くなる。いざというときに大変であるから監視の眼が行き届いている。それが免疫で、その監視に応えて新陳代謝を繰り返している。休んでいる間も動いている時ですら、わずかずつ修復を静かに行っている。ただ隅々までは難しい。分子レベルでたんぱく質の立体構造から少しずつ歪みとなってくる。それが皮膚なら皺になり、関節なら軟骨がすり減り、靭帯なら柔軟性がなくなる。これが老化である。
形あるものを食べる
筋トレはこの自然な新陳代謝に強いストレスをかける。ストレスこそが変化の素、過激過ぎるストレスは破壊となるが、「適度な」ストレス(ここが難しいのだが)は、より強度の強い組織(腱、筋肉)を創る。
より強度の、質感の高い筋肉や腱には当然たくさんの材料が要る。だから豊富なたんぱく質が必要となる。
新鮮で良質なたんぱく質とはなにか?今、生きている動物、植物である。大地に根ざし成長している植物も、周りを駆け巡る動物を、エネルギーを使ってでも捉えて口から食べるということが最も筋肉にとって“自然な”ことなのである。
しかし、そこには壁がある。植物も動物もおいそれとは食べられたくはない。だから消化されにくい成分で身を包んだり、毒を作り出して防ぐ。ほとんどすべての壁もやはり熱に弱い。だから調理という方法を得た人は繁栄した。自らの食事に足らないものとしてプロテインパウダーや種々のサプリを生み出したのもその知恵からだろう。
次回は、飢餓が「初期設定」のヒトの身体が、飽食の時代にどう対応しているのか、対応できていないのか、栄養学的盲点を筋トレの立ち場から、少し分子生物学的要素も加えて述べてみたい。
筆者 プロフィール
浅見尚規(あさみなおき) 昭和32年生まれ
宮崎市在住
経歴:昭和57年宮崎大学(旧宮崎医科大学)医学部卒業
専門分野 脳脊椎脊髄外科
昭和57年からボデイビルを始める。ミスター東九州、ミスター広島(いずれもNBBF)優勝、NGAマスターズ優勝(USA)のタイトル 41歳で競技引退
平成25年まで某ボデイビル月刊誌にて連載 筋トレセミナーを各地にて開催
その他、三輪書店、メディカルビュー社から外科手術用教科書執筆(共著)
趣味:ボデイビルトレーニング、筋トレマシン収集、読書、ピアノ