引き締まった腹部は、古今東西、老若男女、”手に入れたい”パートである。
誰しも、ぼてっと突き出た垂れ下がった腹部など見せなくない、見たくない、だから服で隠す。
今回は、お腹をなんとかしたい人に読んでもらいたいコラムである。なぜなら、なんとかも、何にも、したくない人にとっては、見たくもない読みたくもない事が書いてある。
お腹は最初から膨らんでいる
赤ちゃんのお腹は割れていないが、お母さんのお腹の中で、実は本当に一回割れた時期があることをご存じだろうか。
小さな胎児の腹部空間では狭すぎるために、一度腹腔が正中で破れて、子宮内に腸管を逸脱させて、十分に発達させてから戻すという進化の過程で得た手段。
これから外で生きていく上で発達した腸管はとても大切なものであるからだ。
抱っこするとポコんと胸よりも前に出ている。でも泣き叫んだりするとしっかり凹む。触っても基本硬くない。まだ消化吸収する準備はできていないからでもある。
遺伝子の命令に沿って体積が増していく過程で、大量の食物が口から入ってくる。準備しておいた長い腸管でゆっくりと分子レベルまで分解吸収させる。
ここでも、胸郭のように肋骨という障害物がないために、しかも腹筋も発達していないから、生まれる前から破裂させやすい、成長の過程でも腸管の内容物や消化液による膨らみを受けやすい、expandableな空間が腹部の初期設定がここにある。
腹筋が締まる進化学的理由
まず、首が座る、そしておすわりの姿勢、ハイハイ移動、転びながら立ち上がる事で、背骨は重力に逆らって垂直になっていく。背骨の後ろには起立筋群が発達していくが、前には腸腰筋しかない、そこで腹部に付いている内臓を隔てた腹直筋と腹斜筋群、腹横筋を”利用”する。
腹筋は子宮の中で一回正中で破裂させたがその左右には、肋間筋の痕跡である腹斜筋群や腹横筋がある。それでは強度不足なので、腹直筋を”作った”のだが、胸郭と骨盤を跨ぐ距離は筋繊維だけでは長すぎる。
そこで肋骨の”退化の痕跡”を利用して腱画という結合組織の経由ポイントを作って、このおかげで、一個一個の筋肉の塊が腱画の数で違いはあれど、強い収縮を”直列”で可能にして前方の動的補強組織を作っている。
多くの脊椎動物は背骨が地面に対して最初から平行だが、人では、平行から垂直、また垂直から平行への動的ストレスが掛かるために腹筋が発達せざるを得なかった。
腹筋が締まる美的理由
他の生き物と違ってヒトは、4本足ではなく二本脚で移動するため、進行方向、すなわち人目に晒すところに腹部を”持ってきた”。
動物って、鳥にしてもライオンにしてもオスは意外に見た目に拘るのである。そう、メスからモテるために鳥は飛ぶことを犠牲にしてまで羽根を飾る。立て髪のライオン、胸を叩いて厚みと強さを誇るゴリラもそう。
おそらくヒトもポコんと密度のないお腹よりも密度の高いメリハリのある腹部がカッコいいと”思い”それが進化の中で残ってきたのであろう。
進化は時に、機能よりも”見た目”を選んでしまう。
締めていくきっかけ
今述べてきたことから、弛んでしまったお腹を引き締めるはじめの一歩は、まず意識、そして見せることだろう。最初からボテボテを露出する必要はない。ヒトを含めて動物の身体は、食物飢饉に備えてとにかく食べたものは蓄えるシステムになっている。
新陳代謝は脂肪へ向かいやすい。だからこれを逆手に取って、スイッチを入れるときはまず絶食にする。もちろん続けてはいけない。少しずつ食べる、また食べない、を一週間ほど続けると脂肪は燃焼する経路が主役となる。
あとは収支決算で、食べ過ぎない、食べ足りないけどこの辺で、を続け、しっかりトレーニングを継続すれば”絶対に”腹囲は減っていく。そこからもっと筋肉を浮き出させたい、密度を出したいと願うなら、腹部の筋群にターゲットを絞れば良い。
他の筋肉とは違う、なんていうのは嘘で、同じ骨格筋なので、200回もそれ以上もやる必要などないし時間の無駄である。腕や胸、脚などと同じように強い収縮感を得られる種目を見つけていく。腹部だけ太くなるなんてこともまやかしである。
そして有酸素運動のような無駄なことをせず、腹部のどこが動かせるのか、効かせられるのか、どの動きや位置で収縮が強く感じられるのか、試行錯誤することに時間を費やすべきである。そして、締まってきた腹部をパートナーなどに”晒して”評価してもらうことである。
継続こそ力なり。