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【ひげセンセの健康を学ぶ】第2回 美しい姿勢と歩み

はじめに

立ち姿、歩く仕草に美しさを醸し出す人がいる。

それは、ヒトが重力に逆らって、身体という物体を“無理やり持ち上げて”いるのではなく、進化という長い時間の中で、少しずつ身につけた動的な理想系であるからだ。

形あるもの全てに言えるが、その美しさは永遠ではない。
最初から身につけることができなかった”個体”もある。途中で無くしてしまう個体もある。

現在の地球に生きる僕たちヒトに与えられた時間は平均して数十年。
その時間軸の中で、何が起きていくのか、起きることにどう対応していけば良いのだろうか。

姿勢やシルエットは積み重ね、繰り返し動作で造られる

遠くに人の姿が見える。後ろから誰かの足音が聞こえる。
よく見えなくても、これは近しい人か、そうでないのかある程度わかる。

僕たちの身体は、体幹から上方に頭部、体幹から4つの突起(脚、腕)を突き出す“装備”は変わらないが、お母さんの身体から離れた瞬間から、少しずつその形や動きに修飾がかかる。

まず頭の形。最初、頭蓋骨は、狭い産道を通るために幾つかの骨に別れていて柔らかい。
生後数ヶ月は指で押しただけで形が変わる。寝ている時、親がいる側が偏っている、枕の硬さなどで、頭全体の形は扁平にも斜めにも絶壁にもなる。
髪の毛が生えてくるから気がついた時にはもう“固まっている”。
最初は仰向けで左右を見るだけの頭部“回旋”も、うつ伏せから顔を起こす、ふらふらしない、それを“首の座り”というが、外から入ってくる刺激に対して反応の仕方で起こす頻度、起こす角度が微妙に違って、後頭部から背部への筋肉の発達が違ってくる。

首が座ることで頚椎の最初の湾曲、前彎ができる。
おすわりは胸郭から臀部への背骨周りの筋群に命令が届き始めて可能になる(胸椎後彎)。
そして体幹から出ている脚を使って地面を踏み締めることができてやっと腰椎の前彎が加わり、ヒトとして“望ましい”3つの湾曲を持って立ち、動的な美しさが完成する。
立つという一見静的な姿勢も筋肉は絶えず動きながら微調整する。

動くということは、中枢神経から発した刺激が、ある道(神経)を通って、末端まで届く事が必要条件で、次にきちんと届いたこと、うまく届かない時、それを矯正する信号の是非が絶対条件。
この繰り返しが様々な環境に対応していく過程で色々な“個性”が生まれる。

上肢は胸郭とは、肩甲骨を介して繋がるが関節は浅く、細い腱や短い筋肉があってこそ外れない。
肩甲骨は、胸郭の“筋肉中に浮いている”。
腕が上手く動くように鎖骨が立体的に補強する。
ここで僧帽筋が主役ならなで肩に、三角筋に“分散”しすぎるとイカリ肩となる。

下肢大腿部は捻れながら股関節を作るので、“内股”、“ガニ股”様々な立ち方の癖が身についてくる。
癖が“目立たなく”かつ安定している時、美しい所作として見られる。
旧来和式生活ではフクラハギは短く太くなるし、洋式は細く長い下腿を作る。
風呂やトイレまで日常生活動作、スリッパを履くのか裸足なのか、靴なのか草履なのか、の積み重ねの違いで、特有の個性が出てくる。

立って、空の星を見上げ天気や風の音に耳を澄ませて、餌を求めて大移動していた時代から、同じ場所、同じ空間で、座って屈むことが多くなってきた、握ることも忘れた現代人は、何十万年という年月からできてきた“ヒト”が作り上げてきた姿勢を自ら作った文化で壊そうとしている。
肩こり、首が垂れる(首下がり)、猫背、側彎、滑り、様々な変形に苦しむことになる。

次回は、毎日の“癖のある”動作の積み重ねでトラブルを起こしてしまいつつあ病として治療しないといけない時、すぐに手術を勧め“てしまう”外科医を信用しない運動療法のコツなどについて解説していきたい。

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昭和32年生まれ 経歴:昭和57年宮崎大学(旧宮崎医科大学)医学部卒業  専門分野 脳脊椎脊髄外科 昭和57年からボデイビルを始める。ミスター東九州、ミスター広島(いずれもNBBF)優勝、NGAマスターズ優勝(USA)のタイトル。41歳で競技引退。 平成25年まで某ボデイビル月刊誌にて連載。筋トレセミナーを各地にて開催。その他、三輪書店、メディカルビュー社から外科手術用教科書執筆(共著) 趣味:ボデイビルトレーニング、筋トレマシン収集、読書、ピアノ 「ひげセンセのブログ」https://ameblo.jp/asaminaosan/

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