「ひげセンセ」が筋肉と免疫の関係について解説します
ビーレジェンド商品に同梱される【リアスタ通信】に連載されており、初心者から上級者まで大人気の「ひげセンセの筋肉教養講座」のバックナンバーを掲載!外科医でありながらコンテスト優勝経験もある浅見先生の記事は勉強になること間違いなし!
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筋肉はいかにしてその形と機能を維持しているのか?
人の身体は、兆単位の細胞集合体である。元はと言えば、お母さんの分身である一個の細胞(卵子)が、お父さんの分身(精子)を取り込んでから増え続けた結果。
元は同じ細胞だが、道別れしてできた臓器同士の会話が乏しく勝手に振舞われて暴走されても困る(ガンの発生)。また外に近い場所(皮膚、粘膜)では侵入者、微生物に攻撃されやすい(感染症)。
そこで必要なのがパトロール、監視機構である。
仲間たちを守り、体を維持するために、働き続ける。それを免疫と呼ぶ。
免疫は、身体の警察組織。教育を受け、しかも武器を持つ細胞の集団である。丸腰で「悪もの」は排除できない。
一方で、分別応用能力もないとパトロールは務まらない。
守るためには、体力のある器、そして自らを鍛え、そして教育を受ける必要がある。文武両道が免疫担当細胞の条件となる。
臓器の間、細胞の隙間の隅から隅まで這い回り、異常があれば分担して対処しつつ応援を呼ぶ。
地球上の生き物がその身体を維持して行くシステムは共通だが、ヒトを含む背骨動物がその監視システムを最も発達させた。
免疫細胞の役割分担
免疫担当細胞の主役には、役割分担がある。
異常な細胞や、侵入者に出会うや否や、ひたすら向かって行き取り込んでしまう強者(大食細胞という)、思春期までの間教育を受ける学校に入り(胸腺)、鍛えられ一割近くしか「卒業」できないエリート集団(T細胞という)もある。
落第した細胞たちは自ら死んで行く(アポトーシス)。
この集団を、「甘やかせて」しまったり、暇にさせるとアレルギーの原因にもなる。
別の主役(B細胞という)は、外からの侵入者に対して、長い進化の中で、予め予想されて持っている武器(抗体)を敵に応じて変化させる能力を持つ。
この武器は全てタンパク質から作られる。
主役同士は、やはり特殊なメール、これもタンパク質と化学物質から作られるが、相合で連絡を取り合い(インターロイキン、インターフェロン)、仲間を集め、関所や待機場所も常時備えられている(リンパ節)。
攻撃は最大の防御である。するなら先手でしかも徹底的が必勝となる。
物量作戦が基本なのでブレーキや歯止めが遅いのが欠点であり、免疫は基本的にオーバーなリアクションをする。
壊れた筋肉は2度と戻らない
炎症とは、自らの身体の一部組織の暴走や外敵に対する戦争である。
免疫担当細胞がどんどん集合して、攻撃する。
外敵のみならず、周りの正常な組織も当然影響を受ける。
血管は免疫細胞や栄養の供給のため広がり道を確保する。
しかし押し寄せる細胞群と敵との戦いで溜まった死骸やゴミを取り除く必要もある。
それらを洗い流すために水分が流れ込んできて一部は溜まり、また周りの組織に浸み出して行く(浮腫)。
焼け野原になってしまって、やっとブレーキがかかり始め、免疫担当細胞は引いて行く。
トレーニングや事故で筋肉が「ちぎれる」と、周りの膜、血管から血液はリンパが浸み出してくる。
集まった免疫細胞たちは、もう形を保てないと判断すると、炎症として処理される。
今まで述べてきたように、食べられ、攻撃され、バラバラになって消えて行き、そこは荒廃した場所となる(挫傷、挫滅)。
もう2度とその場所には筋繊維を作ることはできない。
最初は水が溜まっているだけだが、そのあと、繊維状になった物質を作ることができる細胞集団が集まってくる。
この線維芽細胞は、旺盛にその水溜りをパテ埋めして行く。それはあくまで急場凌ぎ。
丁寧に折り畳まれた機能的なタンパク質は作ることができない。これを瘢痕という。
免疫担当細胞が、暴走する前に沈静化すること、それがトレーニングしながら、どうやって筋肉細胞、それを囲む血管や膜を発達させて行く鍵となる。
免疫の過剰なアクションを抑えるために、その場所を冷やす、抗炎症剤投与、細菌感染なら抗生物質内服点滴、腫瘍なら分子レベルに標的を絞った薬が開発されてきた。
次回は、そんな炎症の治療、免疫を刺激しながらも暴走させないトレーニング、それを助ける食事やサプリメントについて解説してみたい。